EFHW用UNUNバランのマウント基板の製作

いくつものEFHW用UNUNバランを作ってきた中で感じたのは、最終的にケースに収めた時にどうしてもSWR特性が変わってしまうことでした。

机上ではSWR特性をいい感じに追い込んで調整出来ていたのに、M型メスコネからそのまま一次側に結線してしまうと、極端にSWR特性が悪くなりました。

最初は悪くなる理由が判らず、机上での追い込み時にはM型中継+Mコネオスからリード線を延ばしていたので、ケースに収める時にも同様の構成にすることで、悪くなるのをある程度は回避できていたものの、Mコネって50Ω保証されていないしなぁ、とかいって自分を納得させていました。

でも実際には、Mコネから一次側コイルまでのリード線の長さが、EFHW用UNUNバランのSWR特性にものすごく影響していることが判明したのです。

実は、一番最初はこのリード線の長さを全く考えないまま、KiCADでえいやとPCBパターンを起こしてJLCPCBに発注をかけました。で、一週間少々で届いた基板にUNUNバランを載せてみたところ、今までと同じくSWRがかなり悪くなってしまいました。

でもさすがにM型中継+Mコネオスからリード線を基板に、というのはアレなので、いろいろと調べていくうちに、調整時のリード線の信号線とGND線を撚り合わせたり離したり、また長さを変えることで、SWR特性がブロードになったりタイトになったり、高くなったり低くなったりすることを見つけました。

そこであらためて普段から自分が使っている机上での調整用のリード線部分の長さをみてみると、M型中継の真ん中からMコネオスを経由してリード線のワニ口部まで、なんと21cmもありました。

なのでこれと同様に、タカチの安価なケースに収まる基板(118x65mm)の上に、Mコネメスから一次側コイルまでのリード線の長さをなるべく長くする(できれば20cm以上にする)という目標のもとで数パターンの基板を起こして、どのパターンがよいかを試してみることにしました。

01) KiCADでのマウント基板データ生成

Rev.0.1のパターン(リード線長は約100mm)

これは芯線(RF)とGNDを合わせたパターン(A)。同様に離したパターン(B)も発注したが、どちらにしても100mmでは短すぎて、どっちもどっちだった。(データは後述)

Rev.0.2のパターン(リード線長は約125mm)

ここからだんだんとコネクタto一次側までをうねうねと伸ばしていくことに……。

Rev.0.3のパターン(リード線長は約150mm以上)

これでいいかな、と思ったけど、結局はさらにうねうねと伸ばして……。

Rev.0.4のパターン(リード線長は約200mm以上)

ここまで伸ばしてみたがRev.0.3との差が大して無かったし、信号線(RF)とGNDが隣り合わせで却ってイマイチな感じになったので、結局はRev.0.3をがんばってもう少し伸ばすことにした。(※Rev.0.5として後述)

03) それぞれの基板のSWR特性を確認

それぞれの基板で同一のEFHW用UNUNバラン用に巻いたフェライトコアでみてみると…

まずは机上での調整(リード線長約210mm)後のSWR特性

ポイントは、ハイバンド側のSWRの谷が30MHzより上になっていることと、21MHz付近のSWRの山が、それでも2より低い、ということ。

これをケースに収めてもそのまま同じSWR特性にしたいのに、Rev.0.1のパターン(リード線長は約100mm)でのSWR特性を見ると

このように、ハイバンド側のSWRの谷が30MHzより下に来てしまった。

さらにRev.0.2のパターン(リード線長は約125mm)でのSWR特性を見てみると

このように、ハイバンド側のSWRが少し改善したものの、それでも30MHzより下のまま。

さらにさらに、Rev.0.3のパターン(リード線長は約150mm以上)でのSWR特性を見てみると

ハイバンド側の谷が30MHzにより近づいた気もするけど、机上の追い込み状態までにはならない。

そして最終的に机上での調整と同じ条件、Rev.0.4のパターン(リード線長は約200mm以上)でのSWR特性を見てみると

ハイバンド側のSWRの谷がさらに低くなりましたが、全体としてはRev.0.3と大差ないので、Rev.0.4のパターンは信号線(RF)とGNDが近すぎ、なのでしょう。

いずれにしても、机上での調整に使用するリード線を、マウント基板の配線と同じ長さにしてから調整しなさい、ということですね。

そして机上で調整する際には、21MHz付近のSWRの山は、実際にワイヤーを繋げると、実は一番下がるので、ここはあまり気にせず、それよりもハイバンド側のSWRの谷を如何に上の方の周波数に持っていくか、が上から下までマルチバンドで電波を出せるか、に関わってくるので、この調整をがんばる方がよい。

04) そして最終的に

最初は100mm(Rev.0.1)から始めて、何とかタカチのSW-125の中に収まる基板上にと、ひたすら長くしていったが、200mm(Rev.0.4)までくると、信号線(RF)とGNDがくっついてしまうようなパターンしかできなくなり、長く伸ばすメリットが失われてしまった。

なので最終的には170mm(Rev.0.5)というパターンにして、もう一つ後述するタカチのSW-100の中に収まるFT140-43(QRP、と言っても~30wまでOKなEFHW用UNUNバラン)用のマウント基板と同じ長さにして、これで開発を打ち止めとして基板を最終発注した。

で、これに合わせて机上での調整(追い込み)用のリード線も、Mコネのメスに直結の170mmとして、改めて巻き直してSWRを調整。

このようなSWRパターンになったので、OKとします。(何度も言いますが、21MHz辺りは実際にワイヤーを繋げると一番下がるので、それよりも全体としてのSWR特性が広い方が大切です)

足掛け二年かけてEFHW用UNUNバランにはまっていろいろとやってきましたが、机上でSWR特性を追い込むために使っているリード線と、ケースに収める際の配線(パターン)の長さは、同じ長さにすべきだったわけです。

05) タカチのケースに収める

さて、これで机上の調整でSWR特性を追い込めた状態そのままで、タカチのケースに収めることができるようになりました。

自分はこういうのに使うネジ類はすべてM5に統一していますが、まずはケースの短辺両側それぞれに、ステーのためのアイボルト(リングボルトとか丸環ボルトとか言ったりします)をつける穴と、ワイヤーを繋げるための金具を取り付ける穴をあけ、ケースの長辺(下側)に16mmのホールソーでMコネメス用の穴をあけています。

さらに気にする人は、ケース内の湿度調整のため?に同様に長辺(下側)にM5の穴をあけてもいいかも?(↓今までのバラック組みのケースから、マウント基板向けケースに変更)

ここまで出来たら、あとは基板をケースに固定する貼り付けボスを、位置を合わせてケースの四隅に貼り、フェライトコアを基板に固定してパチッとはめたら、あとはコネクタ類をハンダ付けして出来上がり。

いかがでしょうか?

タカチには防水ケースとかもあるのですが、そんなのに千円とかを出さなくても、というよりもそれだとリード線の長さが確保できないので、この安価なSW-125にピッタリと入るこのEFHW用UNUNバランマウント用基板を使ったほうが、いろいろな意味でGood!というわけです。


ここまでの基板はFT240-43用でケースもタカチのSW-125でしたが、~20w程度までに対応するFT140-43用の、タカチのSW-100にピッタリな基板も作ってみました。

FT140-43は、本サイトの一連のEFHW記事の最初でも書いたように、0.8mmのポリウレタン銅線(UEW)を3:21巻として、こんな感じで巻きます。

すると、こんな素敵なSWR特性になりました。(この特性でも十分な気もしますが…)

ですが、SWRの谷が30MHより下なのでSWR特性としては全体的に狭いので、一次側の間隔を広げ、二次側の折り返し後を一次側に少し近づけることで、SWR特性を広げます。

これでSWR特性もバッチリ!! になりましたので、ケースに収めて最終確認です。

ケースに収めてもSWR特性はほぼ変わりません。

あとはこのEFHW用UNUバランに実際にワイヤー(19.4m+0.75mスタブ)を繋げてみると…

何ということでしょう、とっても素晴らしいマルチバンドなEFHWアンテナの完成です。

よかったら皆さんもEFHW用UNUNバランを、↓マウント基板とセットで使ってみてください。

※EFHW関連のページ

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EFHW用UNUNバランの作り方(YouTube 動画)