EFHW(UNUN)の作り方

T.Kabu/JS1FVG

・初めに

※当初は別のドキュメントにまとめていたが、いい加減いろいろとやりすぎたのと、結果的にいろいろと間違えていたので、正しいやり方を中心にまとめなおしてみる。

ン十年ぶり?にアマチュア無線に復帰して、最近流行りの「FT8」なら、しゃべらなくても&微弱電波でもDX、つまり海外と通信できるよ、という事を知った。

とはいえ、さすがに5Wじゃホイップごときではダメだろう、ということでフルサイズダイポール、しかも簡単な片端給電型、つまりツェップライクなアンテナがいいなぁ、でも持っているのはサガ電子の7/21MHz用なので、他のバンドでもやりたいぞ、ということから、

これまた話題になっている「EFHW」(End Fed Half Wire antenna)を作りたいと思い立ち、いろいろと手を出し始めた。

EFHWがなんでこんなに話題かというと、HFのほぼ全バンドでSWRが1.xになる、というウソみたいな話があるから。とはいえググってみても、うまくいっている人といない人がいたり、作り方がどう見ても違うモノがあるので、どれが正解なのかが判らない。

ただ、その過程で、これは絶対必要だろというか欲しくなったのが、「NanoVNA」というベクトルネットワークアナライザ。アンテナの特性を見切ることができるという魔法の測定器なのだが、昔ならとても考えられない、たった一万円弱で入手出来るという。

(NanoVNA-H4)

さっそくポチったら、もう大活躍もいいところですよ。サガ電子のツェップアンテナを移動先で調整するのも、SWRがどんな感じなのか一目で見れるだけでもすごい。ましてや、自分でコイル巻いたりアンテナ作ったりする場合には、必須アイテムでしょう。

さて、本題の、そして本当の、EFHWについて述べていきたいと思う。

既に書いているように、HFでの片端給電型アンテナというと、ツェップライクアンテナをすぐに思いつくとおもう。もしくはノンラジアルの垂直ホイップでもいい。ましてや最近ならオートアンテナチューナーと連動した自動伸縮型ホイップまであったりするが、これらは全て、日本語でいうところの片端給電型アンテナ、となる。

ただ、世間でいう、というか今回作りたいEFHWはこれとは一線を画す。

というのも、前述の片端給電型アンテナは、あくまでも狭い同調周波数を、いかに目的の周波数に合わせるか、というもので、アンテナが短ければ短いほど(まぁそれなりに長くても)大抵はSWRの谷はとても狭くなる。だが、EFHWは、とにかくブロードなSWRで、1MHzから30MHzまでのSWRが1.xになる、という、本当にウソみたいなアンテナなのだ。

(微調整後のEFHW用バランのサンプルのSWR特性。疑似空中線として5.1kΩを接続。黄色い線がSWR特性で、ご覧のように1.8MHz~28MHzまでSWRを1.xにすることも可能)

そして、その作り方は前述したように、みんなウソかホントかと疑いながら作っているためか、意外と間違えていて、イヤもしくは実際に「こう作れ」と言われて実際に作っても、実はいろいろな要因で理想的なSWRにならず「やっぱりウソだったのかー」となりかねないのである。

書く言う自分も、「ホントにできるの?!」と疑心暗鬼になりながらも、この写真のようにブロードなSWRグラフが出た時には「ホントだったのかー!!」と声を出してしまった。

というわけで、自分自身がEFHWの情報を探すにあたり迷いに迷ったので、後進の方に同じ思いをして欲しくない&自分の備忘録を兼ねて、本当のEFHWアンテナの作り方について、整理整頓したいと思う。


・用意するもの

EFHWを作る上で用意する上で必須なのは、

  1. フェライトコア(FT140-43や、FT240-43。もしくはその同等品)
  2. 銅線(UEW線などがお勧め。絶縁を保てればよい絶縁テープを使用してもOK)
  3. 47~200pFコンデンサ(数kVの高耐圧が望ましい)
  4. 数m~数十mのワイヤー(アンテナエレメント、最低目的周波数の1/2λは欲しい)
  5. 同軸ケーブルを接続するためのまともなMコネクタ(メス、中継+オスがお勧め)

これらのほかに、バラン部分を収めるための防水ケースやなども必要。

そしてさらに、組み上がったEFHWを測定&調整するために、

  1. NanoVNA(もしくは同等のアンテナアナライザ。SWR計だけだと大変)

があるに越したことはない。というか、NanoVNAを手に入れる理由としてEFHWを作りましょう(笑)

なお、トロイダルコアには、このFT(フェライトコア)シリーズのほかに、FB(フェライトビーズ)シリーズやT(トロイダルコア)シリーズもあるが、実際に銅線を巻いた時に得られるインダクタンスが、圧倒的にFTの方が大きい。(FBシリーズはAL値がよいが、サイズ的に小さ過ぎるので今回は除外)

インダクタンスについては、フェライトコア自体のAL値で判別できるので、お手元にフェライトコアがある場合には、AL値を確認して、上記と同等の値があるもので製作することをお勧めする。

型番AL値
T68-64.7 +/- 5 %
T200-212 +/- 5 %
FT140-43885 +/- 20 %
FT240-431075 +/- 20 %
参照: https://toroids.info/ より

・EFHW用バランの作り方

海外サイトや諸先輩方の記録には、さまざまな巻き方などの情報があるが、王道としてよく言われているのが、一次側を2巻き、二次側を14巻きとする、1:7巻き比のインピーダンス変換回路にする、というモノである。

そして、一次側と、二次側の最初の数巻きを縒り合わせて「バイファイラー巻き」にする。さらに二次側についてはコモンモードチョークでよく使われる、半分まで巻いたところで反対側に折り返して巻く「W1JR巻き」にする。そして一次側の芯線と、一次側と二次側共通のGNDの間にコンデンサを入れることで、夢のようなEFHW用のバランが……と、うまくいくことはまずない。

実際に机上でこのEFHW用のバラン、というかインピーダンス変換部分だけを製作すると、使用するフェライトコアと巻き方、コンデンサの容量などにより、HFバンドのうち、20MHzとか25MHzまでしかSWRが下がらない、もしくは全体的にハイSWRになったりする。

(何となく巻いただけではSWRの谷が二つになったり、そもそも狭かったりする)

自分も最初、FT240-43に、0.4mmのUEW(ポリウレタン)銅線で2:14で巻いて、合成した141pFのコンデンサを接続して、疑似空中線として5.1kΩの抵抗を二次側に接続してNanoVNAで見てみたが、写真のような状況で、HFのローバンドと28MHzならかろうじて、という感じのSWRになった。

なによりFT240-43は大きすぎて扱いづらいので、ひとまずFT140-43でいろいろと検証をすることにしてみた。FT240-43と比べると、FT140-43はAL値が小さいので、巻き数を少し増やして、3:21にしてみた。

(FT140-43の方が小さいので、ワイヤを無駄に使わない。特定のバンドだけならこれでも?!)

すると、写真の通り、若干21MHzあたりが高いものの、それでも2.0を下回っているので、これでももう十分な気もするくらいの、EFHW用バランがいきなり出来てしまった。

その後、何となく、巻き方の粗密などをいじることで、冒頭の写真の通り、とても理想的なSWR特性を持ったEFHW用バラン(のサンプル)が完成した。

ただ、これは「たまたま」であり、そもそも、とりあえずの検証用として0.4mmのポリウレタン銅線を使用しているので、QRPならともかく、海外とやり取りするために50wや100wを出したい、という場合にはさすがに心許ない。

そこで、そんなこともあろうかと、もう一つ入手していた二つ目のFT140-43に、今度は0.6mmのポリウレタン銅線で同様に巻いて、EFHWバランの再現テストをしてみた。すると、同じように3:21で巻いているのに、微妙にSWR特性が違うバランができた。

(巻き方はたいして変わらないのに、再現性が悪い)

これでも十分という諸氏も多いと思うが、こう巻くたびに特性がバラバラになってしまい、再現性がよくないので、ここからの調整方法を、改めて確認することにした。

まずは、一次側と二次側をバイファイラー巻きにしている部分を、もう少し密にしてみると

(SWRの谷と谷の間を下げると、ハイバンド側が狭くなる)

このように、21MHz付近のSWRがぐっと下がるが、それと同時に、30MHz以上も1.5を下回っていたSWRが、狭くなってしまった。

そこで、さらに折り返し後の二次側をもう少し密にしたり、また位置を少し変えたりすることで、28MHzから29MHz-FMも許容範囲内になった。

改めて調整ポイントの整理をすると、

  1. 一次・二次バイファイラー巻き部分の粗密 (赤色の部分)
  2. バイファイラー巻き部分と折り返し後の二次側部分との距離 (青色の部分)
  3. 折り返し後の二次側部分の粗密 (緑色の部分)
  4. 折り返し前の二次側と折り返し後の二次側との距離 (黄色の部分)
  5. コンデンサの容量(多くすると良好なSWRがローバンドにズレる) (橙色の部分)

1)は21MHz付近のSWRに、2)~4)は1)に連動して28MHz付近のSWRに、そして5)は容量を増やすと全体的な同調点(同調幅)を下げる(ただし全体として良好なSWRは狭くなる)、というように作用する。

まずは1)を狭くしつつ、2)を広く取ることで21MHz付近を下げる。あとは3)と4)の粗密を調整しながら、ハイバンドのSWRを下げて(広げて)、妥協点を見つける。

さて、ここまででも、とてもすばらしいSWR特性を持ったEFHW用のバランになるわけだが、これにM型コネクタ-メスを追加すると、せっかくの特性が、ダメダメになる。

写真のように、同軸ケーブルを接続するためのM型コネクタ-メスを仮組みした状態にして改めてSWR特性を見ると、せっかく微調整して下げたのに、全体的にグッと高くなって、さらに狭くなってしまった。

(M型コネクタ-メスを追加しただけで、SWR特性が、全体的に高く&狭くなってしまった)

最初は、この仮組みをした際に、フェライトコアに巻いているコイル部分がズレたのか?と勘違いして、5D-2Vの同軸ケーブルはそのままで、改めてM型コネクタ-メス無しの状態で見てみると、やはり理想的なSWR特性のままである。

(M型コネクタ-メスがない状態なら、とても理想的なSWR特性になる)

M型コネクタ-メスを一つ追加するだけで、こんなにもSWR特性が変化するので、M型コネクタ-メスをEFHW用バランの同軸ケーブル用の端子として使うことはお勧めしない。 疑ったが、その後の調査でコネクタにより左右されるわけではないことが判明した。

お勧めはM型コネクタの中継用コネクタに、普通のM型コネクタ-オスという組み合わせ。

(バランにM型コネクタ-メスを付けるだけでSWR特性が変わるのでお勧めしない←これが原因ではなかった)

中継用コネクタは普通のコネクタに比べて高いのだが、せっかくのすばらしいSWR特性を、安いM型コネクタ-メスにより悪化させてしまう事を考えたら、安いものだと思う。

実際、最終的にとても理想的なEFHW用バランが完成できた。

(Mコネ中継+Mコネ-オスで作成したバランと、そのSWRの写真)

このFT140-43に一次側3巻、二次側21巻きというEFHW用バランの設計図も示す。

FT140-43を使った、EFHW用バランの簡単な設計図

ただこれでは、EFHWのワイヤー部分のインピーダンスを5kΩの抵抗で疑似的に見立てているだけなので、実際に使用する「現場」などのさまざまな要因により、更なる調整が必要になる。ご存じのように給電点と導電体との距離や、ワイヤーエレメントと地上との距離により、インピーダンスは劇的に変化するので、最終的にはEFHWを張る現場合わせ、となる。

給電点が低いとインピーダンスは低くなるので、実際には5kΩではなく、2.5kΩとかの疑似空中線にしてSWR特性を見ておくのも良いと思う。(それはそれは、ウソみたいなSWR特性になるのでお試しあれ)

ただし、給電点が低い、ということは地平面とワイヤーエレメントの間も低い、ということになるので、打ち上げ角や同調周波数について気にしないといけなくなる。もっとも、同調周波数を気にしなくていいのが、このEFHWなので、気にすべきは打ち上げ角だけ、ということになる。ただし、あくまで水平方向にワイヤーエレメントを張った場合の話だが……。


・EFHWの伸張と調整

まずはワイヤーエレメントの長さを、7MHzの波長である42.857mの半波長を、短縮率を0.96程度と考えて、20.4mとしてみた。そして、この長さのワイヤーエレメントを二つ用意して、3.5MHzまでカバーできるようにして、今回はグラウンドのような広大な敷地にて実証実験をしてみる。

実際には、給電部とワイヤーエレメント自体の支持線をさらに両端に5m程度確保して、全部で50m程度のEFHWを、地上高5~3mに展開して、大地以外の誘電体がアンテナ本体に影響がないようにして、これをNanoVRでSWR特性を測定してみた。カウンターポイズなどは何も使っていない。

まずは20.4mのワイヤーエレメントだけを接続した場合から、NanoVNAで確認してみる。

(20.4mバージョンのSWR特性、1~30MHzを見ている)

何もせずに、各バンドでSWRがこれだけ下がっているが、それぞれバンドで少しずつSWRのよい部分が少し低い。そこで、ワイヤーエレメントの端を折り返して調整つつ、NanoVNAで確認を繰り返す。

(長さを微調整。最初は折り返しで、最終的な長さを決定する)

何度かの調整で、最終的に1m程短くして、19.4mにすると、7, 14, 21, 28MHzでほぼ、ATUがあればさらに、問題なく使える状態にすることができた。

(19.4mバージョンの7MHzのSWR特性、ATUが無くてもいいかも?!)
(19.4mバージョンの14MHzのSWR特性、ATUは要らない)
(19.4mバージョンの21MHzのSWR特性、ATUは要らない。18MHzもATUがあれば?!)
(19.4mバージョンの28MHzのSWR特性、ATUがあれば。もしくはバランの調整次第?!)

この結果を元にして、もう一本の20.4mのワイヤーエレメントも1m短くして、全体として38.8mにして、NanoVNAでSWR特性を見てみる。

(19.4mのワイヤーエレメントに、さらに19.4mを追加する……それにしても給電部が遠い)

すると、19.4mバージョンでは全くダメだった3.5MHzについても、SWRが下がっていることが確認できた。

(38.8mバージョンのSWR特性、1~30MHzを見ている。3.5MHzもいけるようになった)

ひとまず、このままの状態で、3.5, 7, 10, 14, 18, 21, 24, 28MHzの各バンドのSWRをもう少し詳細に見てみる。

(38.8mバージョンの3.5MHzのSWR特性、ATUは要らない)
(38.8mバージョンの7MHzのSWR特性、ATUは要らない)
(38.8mバージョンの10MHzのSWR特性、ATUは要らない)
(38.8mバージョンの14MHzのSWR特性、ATUは要らない)
(38.8mバージョンの18MHzのSWR特性、ATUは要らない)
(38.8mバージョンの21MHzのSWR特性、ATUは要らない)
(38.8mバージョンの24MHzのSWR特性、ATUは必要か?!)
(38.8mバージョンの28MHzのSWR特性、ATUは必要)

各バンドが、かなり良好なSWR特性となったが、全体的に少しだけ周波数が高い方にズレている感じなので、長さ調整で切った1mあまりのワイヤーエレメントをスタブとして追加して、これの長さを調整することで周波数帯域を下げて、さらに良好なSWRを得てみる。

(スタブを追加して、長さを微調整。最終的に各バンドが良好な周波数範囲になった)

結果的に給電部で5m程度の地上高が稼げれば、机上と同様の良好なSWR特性が得られることが確認できた。が、打ち上げ角はローバンドになればなるほど、どうしても高くなるだろう。

また、ハイバンドについては、ご存じのように1/2λ以上のエレメント長の場合には、その指向性が真横では無くなってくるので、狙った方向に電波を飛ばす場合には、ワイヤーエレメントを延ばす方向に注意が必要となるだろう。

一通り実証実験が終わった後で、実際に各バンドでFT8モードで電波を出してあちこちのCQを呼んでいたところ、突然Italyから逆に呼ばれて無事に交信ができた。その後も国内はもちろん、海外各局とも交信できた。ワイヤー一本でマルチバンドに出れるこのEFHWアンテナ、まぢですごい!!

実は、実証実験のつもりだったので、ワイヤーエレメントはAWG28(=約0.08sq)という極細電線だったので、SWRも各バンドでだいぶ狭帯域になっているだろうし、送信出力として50Wを出すとどうなるのかと思っていたが、特に問題もなかった。それよりも、慎重に扱わないと張力でワイヤーが切れてしまうので、そちらに神経を使った。
(実際に、最初に圧着端子のところから切れてしまった)

今後はワイヤーエレメントを、せめてAWG20(=約0.5sq)以上の太い電線にした時のSWRの変化を見たり、そうそう、FT240-43もまだ二つあったから、これでも試したいし、19.4mバージョンにコイルを入れて、38.8mバージョンのように3.5MHzにも出れるようにならないか(トップローディング……と思ったが、電圧が大変なことになりそう)など、まだまだいろいろと実証実験を続けたいと思う。

(今回は、アンテナ周りだけでなく、半田ごてなどの工具からパーツケースまで総動員)

以上、あちこちで話題(?!)となっている、EFHWアンテナについての製作と実証実験の結果報告でした。

T.Kabu/JS1FVG